小さいネズミの話

齧歯目というのは哺乳類の中でも非常に多様性に富んだグループで、患者さんとしておなじみのジャンガリアンハムスターから巨大なカピバラやビーバーのような種もいます。

我が家では通称アフリカチビネズミMus minutoidesをペアで飼い始めました。体重5g程度の、世界でも相当小さな齧歯目です。

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飼育し始めて一ヶ月も経たないうちに、子どもを産みました。

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床材を小高く積み上げ、その上に窪地をつくっています。わり合い適当に産み落とされているのが面白い。わちゃわちゃと動き回り、てんでばらばらになってしまいます。それをお父さんおかあさんはせっせと元の位置に戻しています。

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数日すると、黒い色がつきます。まだ目は開きません。おかあさんは四つ足を踏ん張り、立った状態で授乳します。

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二週間もすれば目も開いて、もう普通のネズミです。ただし体重は1-2gなり。

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そして驚くべきことに、出産してから四週間程度で次の子を出産しました。妊娠期間は20日ちょいのようです。

資料によると、6-8週で性成熟するようで、寿命は平均二年、最長で四年という記録があるようです。

まだまだ不明な点が多い生物ですが、個体ごとに微妙に個性があって、見ていて飽きないですね。

こんな小さい哺乳類も診療できたらいいな、と考えながらじっくり観察中です。

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明日はイベント参加します

更新が滞っていて申し訳ありません、患者さんたちから
もっと頻繁に書けとのご指摘を頂きましたので、マイペースでがんばります。

さて、明日8月25日(日)はさいたまスーパーアリーナにて
『Black Out』が開催されます。http://black-out.jimdo.com/
爬虫類・昆虫・哺乳類・鳥類・甲殻類などたくさんの動物たちが見られるイベントで、
当院もこのところ毎回参加させていただいています。

当院のブースでは無料の病気相談のほか、会場で購入された生物の便検査なども承っています。
また、今回は松原院長による
「エキゾチックアニマルの寄生虫」についての講演があります。

犬猫以外の動物を総称してエキゾチックアニマルと呼んでいますが、
彼らのおなかの中には未知なる寄生虫がたくさん生息しています。
特に害も無く、外気に触れると死んでしまうものもいれば
動物のみならず人間にまで害を及ぼすものも当然居て、実に奥が深い世界です。
彼らは彼らで自分の子孫を残そうといろいろな戦略を立てていて、
それが宿主の行動や生態と実に巧妙にマッチングしていたりするので感心してしまいます。
希少生物の中には未だに未記載の新種の寄生虫が潜んでいて、宿主が絶滅するとその寄生虫たちも
人知れずひっそりと絶滅してしまうこともあるわけです。おお、なんてもったいない。

院長は(私もですが)寄生虫に対しては並々ならぬ情熱をもって接していますので、
通常の生態系と対を成す、裏世界の生態系としての寄生虫の世界について
たっぷり語ってくれるはずです。
お時間のある方は是非足を運んでみてください。

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↑前回のブース。ラフな感じでやってますのでお気軽にどうぞ!

夏の動物病院

暑い日がつづきますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
夏の動物病院といえば熱中症、肺水腫、ホットスポットなどが主な病気としてありますが、
今回はそういう話ではありません。
動物病院はやはり動物の排泄物の匂いに悩まされるものですが、夏はそれが特に顕著になります。

先日、ペットの排泄物処理に画期的なゴミ袋を見つけてしまいました。
この「驚異の消臭袋BOS」という可愛いピンクの袋なんですが、見た目とは裏腹に強力な匂い遮断力をもっているようです。
一重なのに、1センチまでウンチ袋に鼻を近づけてもまったく匂わない!
別に宣伝というわけではありませんが、ほんとに凄まじい効果だったのでお勧めしてしまいます。
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特に大型犬や大型ヘビ、フトアゴのうんちは匂います。お困りの方は是非。

なんとかなった一例

当院は爬虫類の診療を積極的に行っています。
爬虫類の獣医学というのはまだ分からないことが多く、特に日本は諸外国に比べて研究が遅れています。
とはいっても外国の文献を見ても記載がないことも多く、イヌネコやヒトのデータを参考にして試行錯誤することがほとんどです。

爬虫類は亡くなるぎりぎりまで症状を隠すことに加え、まだ爬虫類を病院に連れていくという文化が根付いていないせいか
来院時にはすでにかなり病状が進行して手遅れになっているケースに良くぶち当たります。

今回は珍しく個別の症例のご紹介です。

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このホップちゃんは縁日でゲットされてきた小さなカメさんで、なんとなく食欲がないという主訴で来院されました。
全身の皮膚に白い膿瘍が出てきています。

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さらにレントゲン上右の肺が真っ白で、激しい肺炎を起こしていることが想定されました。
ぶっちゃけてしまえば、食欲がなく重度の肺炎になっているオレオサイズの子ガメというのはほとんど治療しても亡くなってしまいます。
皮膚の膿瘍も出ているということは、全身的に何か免疫抑制がかかった状態であるということを示唆しています。
内心頭を抱えましたがわずかな可能性に賭けて、やるべきことをやるだけです。

自宅での管理は無理と判断したので酸素つき温室で入院し、毎日点滴と薬の注射、強制給餌をしました。

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入院2週間ちょっとにしてやっと自力でカメの餌を食べられるまで回復しました。

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↑肺もこの通り綺麗に。
このホップちゃんのように飼い主さんが異常をいち早く捉えられれば、助けられるケースもあります。

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↑こんな素敵なバルーンをいただきました。
コモドオオトカゲとそのおこぼれをつつきに来た鳥さんが実にかわいらしく素晴らしい。
飾らせていただきます、ありがとうございます。(http://ballmaru.exblog.jp/)←バルーン屋さんをされているそうです

カメのように多産多死の生存戦略をとっている動物は、卵からかえった全てが健康に大人になるわけではなく、
どうしてもある一定数は途中で脱落してしまうものです。
そのため購入する際にその見極めがとても大事になるのですが、弱い子だからと言ってあきらめてしまうのは早計です。
命というのは非常にもろい時もありますが、時としてわれわれの想像をはるかに超えて強靭であることに度々驚かされます。
小さな命の最後の受け皿になれたら、獣医師としてこんなにうれしいことはありません。
今回のケースのようなこともあるので、まず一度ご相談ください。

 

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散歩中の拾い物

次第に上着もいらない季節になってきて、ワンちゃんの散歩も快適な季節になってきました。
ワンちゃんが散歩している際の一番の懸念はやはり「拾い食い」ではないでしょうか。
来院される患者さんの中でも散歩中になんか食べちゃった!というケースはとてもよく見受けられます。

こういうのを誤食・誤飲と呼びますが、これについては保険会社のアニコムさんのページが非常に詳しくまとめています。http://www.anicom.co.jp/stopgoin/
動物を飼われている方は是非一度目を通してみてください。

一番怖いのは竹串のような先端が鋭利かつレントゲンに映らない物体です。
無理にはかせようとすると胃や食道に突き刺さり、被害甚大となるのでとても厄介なものです。

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意外なところでは野外の生物を食べることで中毒を起こす場合があります。
つい先日、病院の裏手にある緑道で道のど真ん中を歩いていた大きなアズマヒキガエルを捕まえました。

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↑紅い虹彩がかわいいアズマヒキくん。

東京のど真ん中でこういった生物がみられることに烈しい喜びを隠し切れないわけですが、
散歩中は要注意です。
というのも、ワンちゃんがヒキガエルを咥えたりするとひどい中毒を起こすことが知られています。
ヒキガエルは皮膚などからブフォトキシンとよばれる強烈な毒を出し、これを口に入れたイヌは麻痺、呼吸困難、下手をすると死亡する場合があります。
万が一ヒキガエルを咥えてしまったときは、すぐ取り上げて口の中を洗浄、即動物病院に連れて行ってください。
ヒキガエルが悪いわけではないので、いじめたりしてはいけません。

渋谷のすぐ近くという立地でもこういう中毒は起こりえるので、散歩中は十分に気をつけてくださいね!

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椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、イヌで最もよくみられる脊髄疾患です。
急にどこかを痛がったり、麻痺がおこって歩けなくなったりした場合に、鑑別診断の一つとして疑います。
臨床症状は、疼痛、歩行異常、麻痺、排尿障害などです。
ただし、同様の症状は脊髄炎、腫瘍など他の病気でも起こる可能性があります。

椎間板ヘルニアは、頚部にも胸腰部にも起こります。
胸腰部の椎間板ヘルニアはGrade Ⅰ~Ⅴに分類されます。

Grade Ⅰ:疼痛のみで神経異常がない

Grade Ⅱ:不全麻痺だが歩行可能、繰り返し起こる疼痛

Grade Ⅲ:重度の不全麻痺(歩行、起立不可)

Grade Ⅳ:完全麻痺

Grade Ⅴ:深部痛覚の無い完全麻痺
a:発症後48時間未満
b:発症後48時間以上

犬種としては、ダックスフンドやプードルなどで多く起こります。

椎間板ヘルニアの診断には、画像診断を駆使する必要があります。
しかし、通常のX線検査では、問題となっている部位を特定できる確率は53.3%または51-61%と報告されているため、不十分です。
確定診断には、脊髄造影、CT、MRIなどが必要です。
費用の問題がクリアできれば、CTとMRIを組み合わせることが最も有効です。
MRIでは、脊髄神経の浮腫・炎症なども同時に検出できます。椎間板ヘルニアの予後の決定にはこれらの所見が非常に重要です。

椎間板ヘルニアの治療は、臨床症状、Grade、症例の状態、脊髄の所見などをみて総合的に判断します。
Gradeの低いときは、ケージレスト、抗炎症剤、ステロイド剤などの内科治療、麻痺などが見られる場合には外科治療を行うことが一般的です。

外科治療では、一般的に片側椎弓切除術という方法が選択されます。
外科手術後は、リハビリを早期に行うことが非常に重要です。当院では、手術の次の日からリハビリを開始します。
リハビリの期間は、長い場合4~6ヵ月以上にわたることもあるため、飼い主さんの協力が必要です。

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写真 片側椎弓切除術 圧迫物質を取り除きます。

胸腰部椎間板ヘルニアの予後として、下の表のような報告があります。
このデータだけをみると、GradeⅤの症例は非常に予後が悪く、48時間経ってしまうと外科手術をしても改善が悪いことがわかります

ただし、近年では、深部痛覚の無い胸腰部椎間板ヘルニアのイヌでも92%が歩行可能との報告もあります。
GradeⅤで48時間以上が経過していたとしても、あきらめずに外科手術を行う価値はあると考えられます。
また、サプリメントや民間療法的な治療で椎間板ヘルニアが治るといわれることがありますが、GradeⅣまでであれば8割以上がケージレスト等で改善することを考えると個人的には効果に疑問があります。

内科治療   片側椎弓切除術
Grade Ⅰ:  100%      97%
Grade Ⅱ:   84%      95%
Grade Ⅲ:   84%       93%
Grade Ⅳ:   81%      95%
Grade Ⅴ:     7%     a:50%  b: 6%

椎間板ヘルニアで最も気をつけなければいけないのが、進行性脊髄軟化症という病気に移行することです。
胸腰部椎間板ヘルニアのイヌの3-6%に発生すると言われ、2-4日以内に死亡します。
今のところ、治療法はありません。麻痺が進行したり、発熱や呼吸の異常がみられた場合には要注意です。

受付には

当院には受付専用の人というのがいません。
2名の獣医師と看護師でばたばたと対応するのですが、やはり受付嬢は欲しい。

というわけで秋ごろまでは青色と白色のベタ Betta splendens
が受付嬢として鎮座していました。
その後ヴァンパイアクラブというカニGeosesarma sp. たちが地味に受付を彩っていました。

ただ惜しむらくは一年魚も小型甲殻類も寿命が短い。
次の受付嬢はどうするか。
それなりに長生きする種がいい。
そして動物病院というのは「動物は全て好き!」という人のみが来るわけではないので、
みなに嫌悪感や違和感を持たせない動物種を選抜する必要がありました。

そこで家にいた小亀を連れてきました。
カメは寿命が長く比較的皆に愛される優秀な爬虫類なのです。

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スジオオニオイガメ(ミツウネオオニオイガメ)Staurotypus triporcatus というカメで、
今はかわいらしいですが将来的には甲長が最大40センチにもなる大型のカメです。
名前からするとものすごく臭そうですが、そういうわけではありません。
これまたのんびりした地味な受付嬢ですが、受付でお待たせしている間は
皆様にゆるい癒しを提供してくれると思います。
これからよろしくお願いします。

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2013年が始まりました

新年あけましておめでとうございます。
本年は昨年以上に気合を入れて頑張っていきますので
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
ヴァンケット動物病院は1月は4日から営業しています。
今年の干支は「ヘビ」ということなので。

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△モグラヘビ Pseudaspis cana

アフリカ南部に生息しています。モグラを食べる、鼻先のフォルムと眼がかわいいやつです。院長の新ペット。

年末年始の営業について

12/31(月)、1/1(火)~3(木) はまことに勝手ながら休診とさせていただきます。

今年も残すところわずかとなりました。

ヴァンケット動物病院も今年3月の開業から無事年末を迎えることができました。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

体色というものの奥深さ

数ヶ月前から当院の目の前に、オオゼキさんという大きなスーパーができました。日用品から餌用の野菜なんかもすぐ買えるのでとても重宝しています。毎日休み時間は当ても無くフラフラしているのですが、一番の楽しみは鮮魚コーナーです。切り身だけでなく一本丸々売っているので面白い。魚を飼育するのも好きですが、釣魚、鮮魚はもっと好きなのです。

今日はヒラメが売り出されていました。

 

無眼側(裏側)が黒いので一見して養殖モノもしくは放流モノだな、とわかります。実は昔水産の大学でヒラメの裏側の黒化について研究していたので、ヒラメの裏側を見ると懐かしさを感じてしまいます。

ヒラメやカレイといった異体類とよばれている魚は、稚魚期の最初は左右対称の普通の魚の形をしています。そして孵化後30日あたりで底に張り付く練習を始めます。そのうち裏側の目が表側に大きく移動してきて、口の形も斜になりあのヒラメの顔になるのです。そのあたりの時期に脂溶性ビタミンの過剰や欠乏があると、体の左右性が乱れて裏側の皮膚が表側化し、黒くなるといわれています。さらに飼育槽に砂を敷いて飼育するとその黒化がおさえられるので、接触刺激や砂にもぐれないストレスなんかも関係しているようです。

実際一度裏側に黒い色がついてしまうと放流してもその色はおちないのですが、放流して自然下で生き延びた個体は天然個体となんら変わらない味なはずなので、市場で見かけたらお得かもしれません。

動物病院と何の関係も無い内容になってしまいましたが、よーするにいろんな視点をもてばただの食材コーナーもおもしろくなりますよ、というお話です。

ちなみにアトピー性皮膚炎が慢性化したワンちゃんも黒くなります。おなかと内股のあたりに黒化がみられますね。これは養殖ヒラメのような左右性とは関係ないですが。

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