【獣医師解説】デグーの円鋸術(えんきょじゅつ)|鼻づまりによる呼吸困難に対する外科治療
デグーは、切歯・臼歯の歯根に発生する「オドントーマ(仮性歯牙腫)」や鼻腔内腫瘍によって、空気の通り道が圧迫され、重度の鼻閉塞を起こすことがあります。
デグーは基本的に鼻呼吸を行う動物のため、鼻が詰まると呼吸が非常に苦しくなり、命に関わることも少なくありません。
今回は、デグーの深刻な鼻づまりや呼吸困難に対して行われる外科的処置のひとつ「円鋸術(えんきょじゅつ)」について、症状から手術の目的、術後管理まで獣医師の視点から詳しく解説します。
1. デグーの鼻が詰まるとどうなる?主な症状と危険性
デグーの空気の通り道が塞がってしまうと、日常生活に大きな支障が出始めます。初期は「少し鼻が鳴るだけ」のこともありますが、進行すると急変するリスクがあります。
- ゼーゼーという呼吸音、鼻が鳴る
- 努力呼吸(お腹を大きく膨らませて息をする)
- 開口呼吸(口を開けて苦しそうに呼吸する)
- 寝ている時の呼吸音が大きい
- 食べながら苦しそうにする
- 食欲低下・体重減少
- 活動性低下・元気消失・鼻汁が出る
2. 外科的処置「円鋸術(えんきょじゅつ)」とは?
薬物療法での改善が難しい重度の鼻腔閉塞に対して検討されるのが、外科的に気道を確保する「円鋸術」です。
円鋸術は、鼻骨の一部を外科的に開窓(穴をあける)し、狭くなった鼻腔に新しく空気の通り道を作る手術です。
主に、上顎切歯・臼歯由来のオドントーマ(仮性歯牙腫)、鼻腔内腫瘍、骨増殖性病変などによって鼻道が完全に閉塞してしまった際に、呼吸を補助する目的で実施されます。ラウンドバーやロンジュールという専門器具を用いて鼻骨を開窓し、気道を確保します。また、腫瘍の切除が可能な場合は同時に切除を試みます。
【閲覧注意】実際の円鋸術・手術症例写真を見る(クリックで開きます)
【術後症例】円鋸術により鼻骨を開窓し、気道を確保した実際の状態
※本お写真は、同じ鼻病や呼吸困難で苦しむデグーちゃん、そして悩まれている飼い主様の治療の参考になればと、ご家族様より多大なご協力と掲載のご許可をいただき掲載しております。貴重な症例のご提供、および温かいお心遣いに心より深く感謝申し上げます。
3. 円鋸術の診断と手術の目的
この手術は「病気そのものを完全根治させる治療」ではなく、デグーの苦痛を取り除くための重要な役割を持っています。
行う主な検査・診断
- 呼吸状態の確認・口腔内評価
- X線検査(レントゲン)
- CT検査(非常に有用です)
※CT検査を行うことで、オドントーマの正確な位置や、鼻道の閉塞程度、周囲の骨構造の評価が可能となり、安全な手術計画を立てることができます。
【CT画像:側面】歯根およびオドントーマ病変の横顔(側面)からの評価
【CT画像:正面】正面断面図による鼻道の閉塞程度と周囲骨構造の評価
手術の主目的
円鋸術は、腫瘍や仮性歯牙腫そのものを完全に治癒させる手術ではなく、「呼吸をしやすくすること」を主目的として行います。
- 呼吸状態の劇的な改善
- 生活の質(QOL)の向上
- 息苦しさからの解放による、食欲や活動性の回復
4. 注意点と慎重な術後管理について
⚠️ 術後のリスクと継続治療
デグーは体サイズが非常に小さく、もともと呼吸器トラブルに弱い動物です。そのため、麻酔や手術中・術後の管理には極めて慎重な対応が必要となります。
また、術後には以下のようなリスクが伴う可能性もあります。
- 組織の再生や腫瘍の進行による「再閉塞」
- 術中・術後の「出血」や「感染」
そのため、術後は呼吸状態や食欲を注意精度深く観察し、必要に応じてネブライザー治療や投薬などの継続的な治療・再処置を行います。
5. まとめ:デグーの「鼻が鳴る」症状はお早めにご相談ください
デグーの「鼻が鳴る」「呼吸が苦しそう」という症状は、単なる風邪(呼吸器感染症)ではなく、鼻腔内腫瘍やオドントーマなどの重大な疾患が隠れているケースが多々あります。
特に呼吸状態の悪化は急速に進行することがあるため、手遅れになる前の「早期診断・早期対応」が命を分けます。
デグーをはじめとする小動物のより精密な検査・安全な手術計画に欠かせない「CT検査装置」について、当院では今後の導入を予定しております。
導入に向けた準備や進捗状況につきましては、今後もブログ内にて随時お知らせ・更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
当院(ヴァンケット動物病院三宿動物医療センター)では、デグーの総合的な歯科・呼吸器診察、および円鋸術の実施が可能です。小さな家族の呼吸に少しでも異変を感じたら、迷わずお早めにご相談ください。
