【救急・事故】散歩中や自宅での「誤飲・誤食」!チョコ・ネギ・おもちゃ・保冷剤…吐かせるべき?動物病院で行う内視鏡・処置の基準
「目を離した隙に、テーブルの上のチョコレートを食べてしまった!」
「散歩中、足元に落ちていた焼き鳥の竹串を飲み込んでしまった…」
「お家で無理やり吐かせた方がいいの?それとも様子を見て大丈夫?」
犬や猫、エキゾチックアニマルと暮らすご家族にとって、最も身近で心配なアクシデントのひとつが「誤飲・誤食」です。
焦るあまり「ネットで見た方法で吐かせよう」と考える飼い主さんもいらっしゃいますが、自己判断での催吐は、命に関わる重大な事故につながる危険があります。
誤飲・誤食は、「何を・いつ・どれくらい飲み込んだか」、そして動物の種類や体格、現在の状態によって、取るべき処置が異なります。
今回は、家庭内に潜む危険な異物・中毒物質、やってはいけない対処法、そして動物病院で行う「催吐処置・内視鏡・開腹手術」の判断基準について、獣医師が解説します。
【まず最初に、これだけは覚えましょう】
- 自宅で無理に吐かせない
- すぐ動物病院に電話する
- 食べたものの「現物やパッケージ」を持っていく
この3つが、迅速で適切な治療につながります。
いま誤飲・誤食が起きている場合は、記事を読み進めるより先に、まず動物病院へお電話ください。
1.飲み込んだら危険!身近な異物・中毒物質リスト
ご家庭や散歩コースには、動物たちが口にしてしまう危険なものがたくさん潜んでいます。
重い中毒を起こす身近なもの
テオブロミンやカフェインにより、嘔吐、興奮、不整脈、けいれん発作などを引き起こします。
危険度は、食べた量と製品に含まれるテオブロミンなどの量、動物の体重によって変わります。一般に、ミルクチョコレートよりも、ビターチョコレートや高カカオ製品、製菓用ココアパウダーで危険性が高くなります。
ホワイトチョコレートはテオブロミンが非常に少ないものの、脂肪分や一緒に食べた包装などの問題があるため、「無害」とは言い切れません。
小型犬では板チョコレート1枚でも危険な量に達することがあります。症状は数時間後に出ることもあり、「食べた直後は元気」は安心材料になりません。
赤血球を傷つけ、溶血性貧血を引き起こします。
加熱しても毒性は失われません。ハンバーグ、カレー、味噌汁、すき焼きの汁、餃子、ガーリックトーストなど、ネギ類を含む料理にも注意が必要です。煮汁や粉末であっても、摂取量によっては中毒の原因になります。
貧血の症状が数日後に現れることもあり、元気消失、歯ぐきが白い、黄疸、赤褐色の尿などがみられます。「食べた直後は元気だったから大丈夫」と判断しないでください。猫は犬より感受性が高いことが知られています。
犬では、少量でも急性腎障害を引き起こすおそれがあります。
原因物質として、ブドウに含まれる「酒石酸」やその塩が有力視されています。タマリンドや、クリームターター(酒石酸水素カリウム)を含む手作り粘土などの摂取による腎障害も報告されています。
中毒を起こす量には、果実ごとの成分量や犬の感受性による違いがあり、安全量を一律には決められません。1粒でも、自己判断で様子を見ずに相談してください。
犬では急激な低血糖や肝障害を引き起こす危険があります。
ガムだけでなく、人用の歯磨き粉、菓子類、一部の糖質オフ甘味料、海外製のピーナッツバターなどにも含まれることがあります。
早ければ摂取後30分程度から、ふらつき、嘔吐、けいれんなどが現れます。一方、製品によっては症状が遅れて出ることもあるため、症状がなくてもすぐに相談してください。
保冷剤や冷却ジェルは、製品によって成分が異なります。内容物による中毒や消化器症状、袋やゲルなどによる消化管閉塞が問題になることがあります。
「無毒」「ポリマー製」という表示だけで安全と判断せず、必ずパッケージや残りの現物を用意してご相談ください。高吸水性のビーズを含む製品では、吸水による膨張にも注意が必要です。
また、不凍液などに含まれるエチレングリコールは、重い急性腎障害を起こす非常に危険な物質です。早期の治療が重要で、症状が出るまで待ってはいけません。
成分によって、肝障害、消化管潰瘍、腎障害、神経症状などの原因になります。
特にアセトアミノフェン(カロナールなど)は、猫では少量でも重い中毒を起こし、命に関わることがあります。
イブプロフェン・ロキソプロフェンなどのNSAIDs、抗うつ薬、睡眠薬、血圧の薬などにも注意が必要です。湿布を剥がして噛んだり、飲み込んだりする事故もあります。
薬の名前だけでなく、成分名・1錠あたりの含有量・なくなった錠数が重要な情報になります。
その他の要注意物質
- ユリ・ヘメロカリス類【猫】:葉や花、花粉、花瓶の水などによっても急性腎障害を起こす危険があります。猫のいるご家庭には持ち込まないでください。
- タバコ・ニコチン製品:加熱式タバコのスティック、ニコチンパウチ、禁煙補助ガム、吸い殻の入った水など。嘔吐、震え、けいれんなどを起こします。
- カフェイン:コーヒー豆、エナジードリンク、カフェイン錠剤など。
- マカダミアナッツ【犬】:後肢の脱力、震え、発熱など。
- アルコール:低血糖、低体温、意識障害など。
- 殺鼠剤:抗凝固作用のあるタイプでは、数日後に出血傾向が現れることがあります。別の成分を使った製品もあるため、必ず商品名・成分を確認してください。
- ナメクジ駆除剤(メタアルデヒド含有製品):激しい震えやけいれんなど。
- 防虫剤(ナフタリン・樟脳など)、芳香剤、洗剤類、漂白剤:成分や濃度により、中毒や粘膜障害を起こします。
消化管閉塞・穿孔を起こす物理的異物
- 竹串、つまようじ、骨、針、ガラス:食道・胃・腸を傷つけたり、突き破ったりする危険があります。
- ひも、毛糸、リボン:腸を手繰り寄せ、壊死や穿孔を起こすことがあります。
- プラスチック・ゴムのおもちゃ、スーパーボール:大きさや形状によって、食道や腸に詰まる危険があります。
- ボタン電池・コイン電池:閉塞に加え、接触部で重い化学熱傷を起こすことがあります。特に食道に留まったリチウムコイン電池は緊急対応が必要です。
- 乾燥剤のうち生石灰を含むもの:水分と反応して発熱し、アルカリによる作用も加わって粘膜を傷つけます。乾燥剤は種類によって危険性が異なるため、袋ごと持参してください。
特に警戒したいもの
複数の磁石、または磁石と金属を飲み込むと、腸の壁を挟んで引き合い、血流障害や穿孔を起こす危険があります。「1個だから大丈夫」とは判断せず、個数にかかわらずすぐに相談してください。
水で膨らむおもちゃ、吸水ビーズ、紙おむつ、ペットシーツ、人工雪など。製品の種類や摂取量によって、膨張した内容物や一緒に飲み込んだ素材が閉塞の原因になります。
犬でよくみられる異物です。柔らかくても、胃や腸に詰まり、手術が必要になることがあります。
体格に対して大きいものや、消化されにくいものは、腸閉塞の原因になります。
2.自宅で無理やり吐かせてはいけない理由
ネット上には「塩を飲ませて吐かせる」「オキシドールを飲ませる」といった方法が紹介されていることがありますが、自己判断では行わないでください。
急性高ナトリウム血症を引き起こし、重い神経症状やけいれんなどによって命に関わることがあります。
食道や胃の粘膜を傷つけ、出血性胃炎などを起こす危険があります。特に猫には使用すべきではありません。犬でも、自己判断での家庭使用は避けてください。
また、尖ったものや腐食性物質を吐かせると、口に戻る際に食道や喉をさらに傷つけるおそれがあります。
吐かせるかどうかは、必ず獣医師が判断します。
その他、やってはいけないこと
- 口に指を入れて吐かせようとする:喉を傷つけたり、噛まれて重傷を負ったりする危険があります。
- 口や肛門から出ているひもを引っ張る:消化管を傷つけ、穿孔させる危険があります。
- 牛乳・油・食べ物などを自己判断で与える:中毒の解毒にはならず、その後の処置に影響する場合があります。飲食については病院の指示に従ってください。
- 「致死量に達していないから安全」とネットの表で判断する:致死量未満でも、治療が必要な中毒や臓器障害は起こります。
- 症状がないから翌朝まで待つ:症状が出る前の対応が重要な中毒もあり、異物を取り出しやすい機会を逃すことがあります。
病院でも、催吐を避ける・慎重に判断する状況
- 意識がはっきりしない、けいれんしている、飲み込む力が低下している
- 尖ったもの、大きくて食道を通らないものを飲み込んだ
- 強酸・強アルカリなどの腐食性物質、電池、生石灰などを飲み込んだ
- 灯油、ライターオイルなど、誤嚥すると重い肺障害を起こすものを飲み込んだ
- すでに繰り返し吐いている
- 異物が腸へ移動している、または閉塞・穿孔が疑われる
- 短頭種や、呼吸器・食道などに病気があり、誤嚥のリスクが高い
なお、ウサギなど、吐くことができない動物には催吐処置を行えません。 エキゾチックアニマルでは、動物種に応じた別の対応が必要です。
3.動物病院で行う処置の基準:どうやって取り出す?
動物病院では、必要に応じてレントゲン検査、超音波検査、血液検査などを行い、異物の位置や消化管の状態、全身状態を評価して処置を選択します。
プラスチック、布、ゴム、ひも、木などは、レントゲンで直接確認しにくいことがあります。
腸のガスの溜まり方などの間接的なサインを確認したり、超音波検査、必要に応じて造影検査やCT検査などを追加したりして判断します。
「レントゲンに何も写らなかった=異物はない」とは限りません。何を食べたかという情報が、とても重要です。
① 催吐処置:お薬で吐かせる
飲み込んでから時間が経っておらず、まだ胃内にある可能性が高く、安全に吐き出せると獣医師が判断した場合に検討します。
一般に摂取後1〜2時間以内は検討しやすい時間帯ですが、これは一律の期限ではありません。内容物や胃内の残存状況によっては、時間が経っていても適応になることがあります。
動物種や状態に応じた薬を用いて、胃の内容物を吐き出させます。
犬と猫では使用する薬が異なります。猫では十分に吐かせられないこともあり、催吐は必ず成功する処置ではありません。
また、吐いたとしても、飲み込んだものがすべて出たとは限りません。回収できた量や残存の可能性を評価し、必要に応じて次の処置へ進みます。
② 内視鏡による摘出
食道や胃など、内視鏡で到達できる範囲にあり、器具を使って安全に回収できる異物が対象です。催吐が適さない場合や、催吐で取り出せなかった場合にも検討します。
お腹を切らずに取り出せるため、開腹手術より体への負担を抑えられる場合があります。カメラで確認しながら、特殊な鉗子やネットなどで異物を回収します。
通常は全身麻酔が必要です。入院期間は、異物の種類や粘膜の損傷、全身状態などによって異なります。
- 体格や動物種によっては、使用できる内視鏡や器具が限られる
- 大きさや形状によっては、安全に食道を通して取り出せない
- 深く刺さっている場合や、穿孔が疑われる場合は適さないことがある
- 胃を通過して小腸の奥へ進んだ異物には、通常の上部消化管内視鏡では届かない
胃内にあるうちに相談することで、内視鏡で回収できる可能性が残されます。
③ 開腹手術:胃切開・腸切開など
異物による腸閉塞、内視鏡で安全に回収できない異物、腸が引き攣れるひも状異物、胃腸の穿孔や壊死が疑われる場合などに検討します。
全身麻酔下でお腹を開き、胃や腸を切開して異物を取り出します。
腸が壊死している場合などには、傷んだ部分を切除し、残った腸をつなぎ合わせる手術が必要になります。
④ 中毒物質に対する全身治療
中毒では、胃の内容物を取り除くだけでは治療が終わらないこともあります。
- 活性炭の投与:吸着できる毒物について、消化管からの吸収を抑えるために使用します。効かない物質もあり、誤嚥などの危険を評価して判断します。
- 点滴・輸液管理:脱水や循環状態を補正し、腎機能・尿量・電解質などを確認しながら調整します。原因物質や検査結果によっては、数日間の入院が必要になることがあります。
- 原因に応じた薬物治療:キシリトールによる低血糖へのブドウ糖投与、アセトアミノフェン中毒へのアセチルシステイン、エチレングリコール中毒への解毒治療などを行います。
- 血液検査などによるモニタリング:肝臓・腎臓の数値、血糖値、貧血、凝固異常などを、必要に応じて数日後まで追跡します。
⑤ 「経過観察する」という選択
小さく、滑らかで、毒性がなく、消化管を通過できる可能性が高い異物では、全身状態や画像検査の結果から、自然排出を待つ判断をすることもあります。
ただし、これは獣医師が安全性を評価したうえで行う経過観察です。
便の確認だけでなく、必要に応じた再診や画像検査で、異物の移動・排出を確認します。便が出ていても、部分的な閉塞を否定できるわけではありません。
嘔吐、食欲低下、元気消失、腹痛などがあれば、予定の再診日を待たずに連絡してください。
4.病院へ連絡する際、伝えてほしい「5つの情報」
誤飲・誤食に気づいたら、すぐに動物病院へ電話をしてください。その際、以下の情報を伝えていただくと、判断や準備がスムーズになります。
- 何を飲み込んだか:商品名、成分、素材、形、大きさ
- いつ飲み込んだか:何分前・何時間前か。分からなければ、最後に無事を確認した時刻
- どれくらい飲み込んだか:なくなった個数や、おおよその量
- 現在の様子:元気、よだれ、嘔吐、震え、呼吸の異常など
- 動物の種類と体重:犬種・猫種なども含めてお伝えください
年齢、持病、服用中のお薬も、処置や麻酔の選択に関わる重要な情報です。
持参していただきたいもの
- 食べたもののパッケージや成分表示
- 残っている現物
- かじられたおもちゃ本体や、同じ製品
- 吐いたものがあれば、袋などに入れたもの
- 成分表示や事故の状況を撮影した写真
薬の場合は、成分名と含有量が特に重要です。持参物を探すために受診が遅れそうな場合は、まず電話でご相談ください。
事前にご連絡いただくことで、受け入れの可否を確認し、必要な処置の準備を進められます。
ただし、呼吸困難、意識障害、けいれんなどがある場合は、電話のために受診を遅らせないでください。 可能であれば、同行者に連絡をお願いしながら救急受診してください。
- かかりつけと夜間救急病院の電話番号をスマートフォンに登録する
- 診療時間と、移動にかかる時間を確認する
- 最近の体重を把握しておく
動物の中毒が疑われるときの最初の連絡先は、動物病院です。かかりつけ、または受け入れ可能な夜間救急病院へご相談ください。
5.当院(ヴァンケット動物病院)の救急・外科対応
誤飲・誤食は、時間の経過によって毒物の吸収が進んだり、異物が胃から腸へ移動したりすることで、処置の選択肢が変わります。
ヴァンケット動物病院 三宿動物医療センターでは、誤飲・誤食の症例に対し、動物の状態と飲み込んだものに応じて、適切な処置を検討します。
- 催吐の適応を判断したうえでの処置
- 内視鏡システムによる異物回収
- 腸閉塞や消化管穿孔に対する外科手術
- 犬・猫に加え、エキゾチックアニマルの異物誤飲への対応
対応できる処置は、動物種・体格・全身状態や、診療時間・受け入れ状況によって異なります。来院前にお電話でご確認ください。
「少しかじっただけかもしれない」「本当に飲み込んだか分からない」という場合も、ご相談ください。問診や診察、必要に応じた画像検査などから、検査・処置・経過観察の必要性を判断します。
なお、1回の画像検査ですべての異物を否定できるとは限らず、再検査が必要になることもあります。
まとめ:誤飲・誤食は自己判断で様子を見ず、すぐにご相談を
誤飲・誤食では、早い相談が治療の選択肢を広げます。
異物が胃の中に留まっていれば、催吐処置や内視鏡によって、お腹を切らずに取り出せる可能性があります。一方、食道に詰まった異物や、一部の中毒物質では、特に迅速な対応が必要です。
そして忘れないでいただきたいのが、中毒は、食べた直後に症状が出るとは限らないということです。ネギ類による貧血、抗凝固性殺鼠剤による出血、ブドウによる腎障害などは、遅れて明らかになることがあります。
愛犬・愛猫、エキゾチックアニマルが何かを誤って口にしてしまったときは、ご自宅で無理に吐かせようとせず、ヴァンケット動物病院 三宿動物医療センター、または受け入れ可能な救急動物病院へお電話ください。
大切なご家族のために、状況に応じた対応をご案内いたします。
【救急・誤飲誤食】犬・猫・エキゾチックアニマルの異物誤飲・中毒のご相談
まずはお電話にて状況をお知らせください。
