猫の慢性腎臓病(CKD)とは?原因と予防について

はじめに

こんにちは、ヴァンケット動物病院三宿動物医療センター副院長の須藤です。いきなりですが、8/8は何の日かご存じでしょうか。

8月8日はなんと!「世界猫の日」なんです。

今日は、世界猫の日にちなんで、猫に多い病気である慢性腎臓病(CKD)についてお話ししたいと思います。猫の死亡原因の1位は泌尿器系疾患であり、その中でも慢性腎臓病は多くの猫が罹る病気で、ある研究では10歳以上の猫の3頭に1頭が罹っているとも言われています。

出典:動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命 と死亡原因分析

慢性腎臓病は早期発見と適切なケアがとても大切です。愛猫と長く一緒に過ごすために、お家でのチェックポイントや気を付けるべきことなどについて一緒に学んでいきましょう!

慢性腎臓病とは?

慢性腎臓病(CKD)は、様々な原因で猫の腎臓が正常に機能しなくなる病気です。3か月以上、腎機能の低下が続いている時に慢性腎臓病と診断されます。腎臓は、体内の老廃物を排出し、電解質のバランスを保ち、水分や血圧の調整を行う重要な役割を担っています。しかし、慢性腎臓病が進行すると、これらの機能が低下し、様々な健康問題が引き起こされます。慢性腎臓病を完治させられる治療法は現時点では存在せず、時間の経過とともに進行していくため、早期発見早期治療が重要です。

慢性腎臓病は進行度により4つのステージに分類されています。

CKDの症状と早期発見の重要性

CKDの初期症状は気づきにくいことが多いです。初期には、尿が薄くなり尿量が増え、水をたくさん飲むようになる多飲多尿から始まることが多く、体重減少、食欲不振、無気力などがあります。進行すると、以下のような症状が現れます:

  • 多飲多尿:尿の量が増え、同時に飲む水の量も増えます。これは腎臓が尿を濃縮する能力を失い始めるためです。
  • 嘔吐と吐き気:腎臓が正常に機能しなくなると、体内に毒素が蓄積し、吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。
  • 貧血:腎臓が赤血球の生成を助けるホルモンを産生しなくなるため、貧血が発生することがあります。
  • 口臭:腎臓が老廃物を適切に排出できなくなると、口臭が強くなることがあります。
  • 高血圧:CKDの進行により、高血圧が発生することがあります。
  • 体重減少:腎機能が低下すると、栄養の吸収が悪くなり、体重が減少します。
  • 食欲不振:体調不良や吐き気のために食欲が減少します。
  • 毛艶が悪くなる:栄養不足や体調不良のために、毛艶が悪くなります。
  • 元気消失:体調不良や貧血のために、元気がなくなります。
  • 下痢や便秘:腎機能の低下により、消化器系のトラブルが発生することがあります。

これらの症状が現れた場合、早期に動物病院で診断を受けることが重要です。早期に発見することで、病気の進行を遅らせ、猫の生活の質を向上させることができます。

お家でのチェックポイント

こんなポイントで、愛猫の様子をチェックしてみましょう:

  1. 飲水量の変化:急に水を多く飲むようになったり、飲む量が減ったりしていませんか?
  2. 尿の量と回数:トイレに行く回数が増えたり、尿の量が増えたり減ったりしていませんか?
  3. 体重の変化:定期的に体重を測り、急激な増減がないか確認しましょう。
  4. 食欲の変化:食べる量が減ったり、食べ物に対する興味がなくなっていませんか?
  5. 活動量と元気:普段と比べて元気がない、遊ばなくなったと感じることはありませんか?
  6. 毛並みの状態:毛がぱさついたり、艶がなくなっていませんか?
  7. 嘔吐:頻繁に嘔吐をしていませんか?
  8. 便の状態:下痢や便秘が増えていませんか?特に慢性腎臓病により脱水すると便秘になることが多いです。
  9. 口臭:口臭が強くなったと感じることはありませんか?
  10. 尿の色や臭い:尿の色が薄くなったり、異常な臭いがすることはありませんか?

これらのチェックポイントを定期的に確認し、異常を感じたら早めに動物病院に相談しましょう。

予防と健康管理

慢性腎臓病の早期発見早期治療には、定期的な健康診断が欠かせません。特に7歳以上の猫には、年に1回または2回の尿検査と血液検査を含む健康診断が推奨されます。また、猫は飲水量が少なくなりがちな動物で泌尿器疾患に罹りやすいので、日常的な健康管理として、猫が十分な水分を摂取し、適切な食事を摂るように気を配ることも重要です。

  • 定期的な健康診断:7歳以上の猫は年に1回または2回の健康診断を受けることをお勧めします。尿検査と血液検査を含むこれらの診断は、初期段階でCKDを発見するために非常に有効です。

特に定期的な尿検査は慢性腎臓病の早期発見に欠かせません。BUN、クレアチニンといった血液検査の腎臓の数値は腎機能が3/4以上失われてからでないと数値が上昇してきませんが、尿の薄さを調べることで、より初期段階の腎機能低下をキャッチすることができます。

  • 十分な水分摂取:猫は水分を十分に摂取しないことが多い動物なので、常に新鮮な水を用意し、水分摂取を促す工夫が必要です。
  • お水の場所を増やす、流れる水場を用意する(猫によって好みは様々ですが流れる水の方を好む子もいます)、一日二回以上水を替え常に新鮮な水が飲めるようにする、ウエットフードを組み合わせるなど様々な方法がありますので、愛猫に合う方法を探してみましょう

まとめ

猫は慢性腎臓病になりやすい生き物であり、早期発見と予防が非常に重要です。定期的な健康診断とお家での健康チェック&ケアで、猫たちが長く健康で幸せな生活を送れるよう、一緒に頑張りましょう!

当院は猫に優しい動物病院の認定であるCat Friendly Clinicのゴールドレベルを取得しています。猫の健康についてご不安なこと、ご不明点がありましたら、いつでもお気軽に当院にご相談ください。

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