【猫の小細胞性リンパ腫】吐く・痩せる・下痢が続くときに知っておきたい病気

【猫の小細胞性リンパ腫】吐く・痩せる・下痢が続くときに知っておきたい病気

「最近、吐く回数が増えた」
「食べているのに、少しずつ痩せてきた」
「下痢が長引き、治療しても繰り返す」

このような症状の背景に、猫の「小細胞性リンパ腫」が隠れていることがあります。

リンパ腫と聞くと、急速に進行する怖い病気を想像されるかもしれません。しかし、小細胞性リンパ腫は比較的ゆっくり進行することが多く、治療によって長期間、普段に近い生活を送れる猫もいます。

今回は、猫でよくみられる消化管の小細胞性リンパ腫を中心に、症状や検査、治療についてご紹介します。

小細胞性リンパ腫とは?

リンパ腫は、免疫を担う「リンパ球」が腫瘍化する病気です。「小細胞性」という名前は、顕微鏡でみた腫瘍細胞が小さいことに由来します。腫瘍そのものの大きさを表す言葉ではありません。

猫の消化管に発生する小細胞性リンパ腫の多くは、Tリンパ球由来の低悪性度のリンパ腫です。中高齢の猫で多くみられ、大きなしこりを作らず、腸の壁に腫瘍細胞が広がることがあります。

どのような症状がみられる?

⚠️ 実際の症例写真(嘔吐・下痢)を表示する ※クリックで展開
実際の猫の嘔吐 実際の猫の嘔吐
実際の猫の下痢 実際の猫の下痢

実際の猫の嘔吐と下痢の写真

主な症状は、次のようなものです。

  • 少しずつ体重が減る
  • 嘔吐を繰り返す
  • 下痢や軟便が続く
  • 食欲が落ちる、食べむらが増える
  • 元気や活動量が低下する

一方で、食欲が保たれている猫や、下痢が目立たない猫もいます。「よく食べているから大丈夫」とは限りません。

症状だけでは慢性腸炎などと区別できないため、体重の変化も含めて評価することが大切です。

検査では何を調べるの?

内視鏡検査の様子 内視鏡検査の様子

まずは血液検査や便検査、腹部超音波検査などを組み合わせ、消化管以外の病気も含めて原因を調べます。必要に応じて、甲状腺や膵臓の検査、ビタミンB12の測定なども行います。

超音波検査では、腸の壁の厚さや構造、周囲のリンパ節などを確認します。ただし、超音波検査だけで小細胞性リンパ腫を確定したり、否定したりすることはできません。慢性腸炎と似た所見を示すためです。

慢性腸炎との区別には「組織検査」が重要

小細胞性リンパ腫と、リンパ球・形質細胞性腸炎などの慢性腸炎は、症状だけでなく、顕微鏡でみた組織の様子も似ていることがあります。

診断には、内視鏡や手術で腸の組織を採取し、病理組織検査を行うことが基本になります。採取方法は、疑われる病変の場所や猫の全身状態に応じて選びます。

判断が難しい場合には、細胞の性質を調べる「免疫染色」や、リンパ球の遺伝子のパターンを調べる「PARR検査」を追加します。ただし、PARR検査も単独で確定診断できる検査ではなく、病理所見やほかの検査結果と合わせた判断が必要です。

治療は内服薬が中心です

消化管の小細胞性リンパ腫では、一般的に、ステロイド薬のプレドニゾロンと、抗がん剤のクロラムブシルを組み合わせて治療します。

治療の目標は、病気を抑えながら、食欲や体重を保ち、その猫らしく過ごせる時間を長くすることです。薬の量や投与間隔は、治療への反応と副作用を確認しながら調整します。

また、必要に応じて吐き気への対処、食事の調整、ビタミンB12の補充などを行い、消化吸収と栄養状態を支えます。

抗がん剤の副作用はある?

クロラムブシルは、内服治療に用いられますが、副作用がない薬ではありません。

白血球などの血液細胞が減る「骨髄抑制」や、食欲低下、嘔吐・下痢、肝酵素の上昇などに注意が必要です。見た目には元気でも検査で変化が見つかることがあるため、定期的な血液検査が欠かせません。

投薬中に体調が変わった場合は、動物病院へ連絡してください。薬の取り扱いも、処方時の説明に従いましょう。

治療すると、どのくらい過ごせる?

小細胞性リンパ腫では、治療によって症状が改善し、年単位で良好な状態を保てる猫もいます。

消化管の小細胞性リンパ腫の猫28頭を対象とした研究では、クロラムブシルとステロイドによる治療で96%に臨床症状の改善がみられ、最初の寛解期間の中央値は786日、約2.2年でした。ここでいう「寛解」は、病気の症状が落ち着いた状態を意味し、完治と同じではありません。

この数字は、個々の猫の余命を示すものではありません。治療への反応や併存疾患などによって経過は異なるため、体重や症状、検査結果を見ながら、その子に合った治療を続けていきます。

「年齢のせい」「いつもの毛玉」と決めつけずに

猫の嘔吐や体重減少には、さまざまな原因があります。小細胞性リンパ腫も、その一つです。

ご自宅では、食欲だけでなく、体重、吐いた回数、便の状態を記録しておくと診察に役立ちます。

吐く回数が増えた、食べているのに痩せる、下痢が続くといった変化があれば、早めにご相談ください。原因を調べ、その猫に必要な検査と、生活の質を大切にした治療を一緒に考えていきましょう。

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