もし家のわんちゃん猫ちゃんが足を痛がっていたら…

こんにちは。獣医師の佐藤です。

今回は股関節脱臼についてお話します。

私は自宅で猫を飼っているのですが、先日帰宅すると我が家の猫が左後ろ足に体重をかけないようにひょこひょこ歩いていました…。このように片足をかばって歩き方がおかしいことを獣医学用語で「跛行(はこう)」と言います。明らかに左足を触ると痛がり元気もないため、病院に連れて行きました。

そこでX線検査を行うと股関節に異常が見られました。股関節は骨盤と大腿骨をつなぐ関節で足の付け根の部分です。X線の画像はあおむけで撮影しているので左足は画像の右側になります。

足をまっすぐ伸ばした状態だと左の股関節が変形しているのがわかりますが、カエル足状態にして撮影すると股関節が外れかかっているのがわかりました。

関節が外れることを「脱臼」といいますが、今回の場合完全に脱臼していないので「亜脱臼」といいます。

脱臼は交通事故や高所からの落下などの外傷で起こることが多いですが、筋力が低下する内分泌疾患や代謝異常、神経疾患、股関節形成不全や変形性関節症から続発して発生することもあります。この子は過去に左足の膝蓋骨(膝のお皿の骨)の脱臼もあり手術をして治療済みなのですが、術後しばらくたってから股関節の変形が見られていたため、明らかな跛行などはありませんでしたが、関節には少しずつ負担をかけていたと考えられます。よって変形性関節症があるところに高いところからの飛び降りなどで股関節に負荷がかかり亜脱臼を起こしてしまったと考えています。

外傷で脱臼を起こした場合、関節をもとの位置に戻し、しっかりはまるようであればしばらくテーピングで固定し、疼痛管理を行ないながら経過を見る内科治療もありますが、脱臼を繰り返したり、構造自体が変形している場合は安定を得られなかったり、痛みが続くことが多いので外科手術で治療する場合もあります。今回は変形性関節症も見られたため、脱臼を整復しても痛みを繰り返すことが予想されたため、外科的治療を行いました。

今回行った手術は大腿骨頭切除という方法です。大腿骨の関節部分(大腿骨頭と呼ぶ)を切断し関節がずれる際の痛みを軽減します。

写真は切断する大腿骨頭部分を周りの筋肉を剝がし、かき分けながら出しているところです。

切断し終わった大腿骨頭と、切断後の手術中のX線写真になります。

股関節の骨は離れ離れになりますが、周りの筋肉が偽関節として働き、普通に歩行やジャンプもできるようになります。

術後は肢をかばってしまうと使わない筋肉がどんどん痩せ、関節の可動域も狭くなり歩きにくくなってしまうので、肢の曲げ伸ばしを行ったり、二本足で歩かせて負重させるといったリハビリが必要になります。リハビリは痛いのでかなり嫌がりますが、ちゃんと元のように歩くことができるように心を鬼にして行います。

現在術後約2か月経ちますが徐々にかばわず歩けるようになっています。

股関節脱臼やそのほか四肢に関わる病気の場合、筋肉が落ちてから治療をしようと思っても、治るのに時間がかかったり、かばって歩くのが癖になってしまうと、元のように歩けなくなる場合もあるので早めにご相談下さい。