椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、イヌで最もよくみられる脊髄疾患です。
急にどこかを痛がったり、麻痺がおこって歩けなくなったりした場合に、鑑別診断の一つとして疑います。
臨床症状は、疼痛、歩行異常、麻痺、排尿障害などです。
ただし、同様の症状は脊髄炎、腫瘍など他の病気でも起こる可能性があります。

椎間板ヘルニアは、頚部にも胸腰部にも起こります。
胸腰部の椎間板ヘルニアはGrade Ⅰ~Ⅴに分類されます。

Grade Ⅰ:疼痛のみで神経異常がない

Grade Ⅱ:不全麻痺だが歩行可能、繰り返し起こる疼痛

Grade Ⅲ:重度の不全麻痺(歩行、起立不可)

Grade Ⅳ:完全麻痺

Grade Ⅴ:深部痛覚の無い完全麻痺
a:発症後48時間未満
b:発症後48時間以上

犬種としては、ダックスフンドやプードルなどで多く起こります。

椎間板ヘルニアの診断には、画像診断を駆使する必要があります。
しかし、通常のX線検査では、問題となっている部位を特定できる確率は53.3%または51-61%と報告されているため、不十分です。
確定診断には、脊髄造影、CT、MRIなどが必要です。
費用の問題がクリアできれば、CTとMRIを組み合わせることが最も有効です。
MRIでは、脊髄神経の浮腫・炎症なども同時に検出できます。椎間板ヘルニアの予後の決定にはこれらの所見が非常に重要です。

椎間板ヘルニアの治療は、臨床症状、Grade、症例の状態、脊髄の所見などをみて総合的に判断します。
Gradeの低いときは、ケージレスト、抗炎症剤、ステロイド剤などの内科治療、麻痺などが見られる場合には外科治療を行うことが一般的です。

外科治療では、一般的に片側椎弓切除術という方法が選択されます。
外科手術後は、リハビリを早期に行うことが非常に重要です。当院では、手術の次の日からリハビリを開始します。
リハビリの期間は、長い場合4~6ヵ月以上にわたることもあるため、飼い主さんの協力が必要です。

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写真 片側椎弓切除術 圧迫物質を取り除きます。

胸腰部椎間板ヘルニアの予後として、下の表のような報告があります。
このデータだけをみると、GradeⅤの症例は非常に予後が悪く、48時間経ってしまうと外科手術をしても改善が悪いことがわかります

ただし、近年では、深部痛覚の無い胸腰部椎間板ヘルニアのイヌでも92%が歩行可能との報告もあります。
GradeⅤで48時間以上が経過していたとしても、あきらめずに外科手術を行う価値はあると考えられます。
また、サプリメントや民間療法的な治療で椎間板ヘルニアが治るといわれることがありますが、GradeⅣまでであれば8割以上がケージレスト等で改善することを考えると個人的には効果に疑問があります。

内科治療   片側椎弓切除術
Grade Ⅰ:  100%      97%
Grade Ⅱ:   84%      95%
Grade Ⅲ:   84%       93%
Grade Ⅳ:   81%      95%
Grade Ⅴ:     7%     a:50%  b: 6%

椎間板ヘルニアで最も気をつけなければいけないのが、進行性脊髄軟化症という病気に移行することです。
胸腰部椎間板ヘルニアのイヌの3-6%に発生すると言われ、2-4日以内に死亡します。
今のところ、治療法はありません。麻痺が進行したり、発熱や呼吸の異常がみられた場合には要注意です。