予防について

予防接種

予防接種は100%病気を防げるものではありません。しかし、予防接種を定期的に行うことにより、病気にかかりにくくし、万が一病気にかかっても軽度に抑えることができます。
予防接種は、基本的に健康な個体に行うものですので、病気や高齢の個体では接種を控えた方が良い場合もあります。


ワクチン接種後の副反応について

ワクチン接種後アレルギー反応は、接種後数分~60分以内に発現する即時型反応と数時間~数十時間で発現する非即時型反応に分けられます。特に全身性のアレルギー反応であるアナフィラキシーショックは、命に関わることもある重篤な反応です。 残念ながら、どの個体に副反応が起こるか予測することはできません。

イギリスで1995~1997年に行われたイヌのワクチン接種後副反応に関する疫学調査においては、10000件のワクチン接種で、アナフィラキシー0.018例、過敏反応0.028例、蕁麻疹0.007例であったと報告されています。アナフィラキシーは即時型反応であるため、接種後しばらくは病院内で様子を見ることをお勧めします。 また、接種後数日は、激しい運動やシャンプーなどは避け、状態をよく観察して、異常があればすぐに来院するようにしてください。


犬の予防接種

イヌ

狂犬病ワクチンと混合ワクチンがあります。生後91日以上の犬は、狂犬病ワクチンを1年に1回接種し、飼い犬登録することが法的に義務付けられています。
混合ワクチンと狂犬病ワクチンを同時に接種はできません。狂犬病ワクチン接種の前1ヶ月と接種後1週間以上は混合ワクチン接種を避けてください。

強く推奨(コアワクチン)

犬パルボウイルス
犬ジステンパーウイルス
犬アデノウイルス2型

住環境や病原体に関する情報などを考慮(ノンコアワクチン)

犬パルボウイルス
犬ジステンパーウイルス
犬アデノウイルス2型

子犬の初年度

母親からの移行抗体が干渉し、ワクチンの効果が出にくい場合があるため、接種年齢、飼育環境および個体の健康状態等により2~3回の接種が必要となります。それ以降は、日本国内では通常1年に1回の追加接種が行われています。

近年、ワクチン接種プログラムについては様々な意見が出てきています。米国動物病院協会による犬用ワクチンの推奨ガイドライン(2003)では、コアワクチンを初年度複数回の接種後、1年後の追加接種、その後3年毎の接種とされています。犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬アデノウイルス2型に対する免疫持続期間は7年以上で効果90%以上、犬パラインフルエンザウイルスでは免疫持続期間3年以上、効果80%以上、レプトスピラでは、免疫持続期間1年未満、効果50~70%とされています。

一方、市販ワクチンの使用書には、初年度接種以降の再接種について、年1回の再注射が望ましいと記載しているものもあります。日本では、アメリカと比較してワクチン接種率が低いため、集団免疫の観点から考えると3年に1回の接種では感染症に対する全体のリスクを上げる結果となるという意見もあります。抗体価の持続期間や免疫応答には個体差があるため、抗体価を測定するというのも選択肢の一つです。また、年に1回の接種をしていないと、ペットホテル、トリミングサロン、ドッグラン、病院などで受け入れてもらえない場合もあります。


猫の予防接種

ネコ

3種混合ワクチン(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症)、5種混合ワクチン(上記3種+猫白血病ウイルス、猫クラミジア感染症)、猫免疫不全ウイルス(FIV)ワクチンなどがあります。

強く推奨(コアワクチン)

猫ウイルス性鼻気管炎
猫カリシウイルス感染症
猫汎白血球減少症

住環境や病原体に関する情報などを考慮(ノンコアワクチン)

猫白血病ウイルス
猫クラミジア
猫免疫不全ウイルス

子猫の初年度

母親からの移行抗体が干渉し、ワクチンの効果が出にくい場合があるため、接種年齢、飼育環境および個体の健康状態等により2~3回の接種が必要となります。それ以降は、日本国内では通常1年に1回の追加接種が行われています。

近年、ワクチン接種プログラムについては様々な意見が出てきています。米国猫臨床医協会・猫内科学会による猫用ワクチンの推奨ガイドライン(2000)では、コアワクチンを初年度複数回の接種後、1年後の追加接種、その後3年毎の接種とされています。1997年にCornell大学のFred Scott博士らは、猫の3種混合不活化ワクチンを8週齢と12週齢時に接種した猫をSPF状態で飼育した結果、少なくとも3年間は3種のウイルスに対する抗体が持続すると報告しています。

一方、市販ワクチンの使用書には、犬と同様に初年度接種以降の再接種について、年1回の再注射が望ましいと記載しているものもあります。日本では、アメリカと比較してワクチン接種率が低いため、集団免疫の観点から考えると3年に1回の接種では感染症に対する全体のリスクを上げる結果となるという意見もあります。

ネコでは、ワクチンの接種部位に非上皮性悪性腫瘍が発生する場合があります。組織学的にその大部分は、繊維肉腫ですが、悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫、未分化肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などが発生することもあります。

2002年のアメリカの報告では、ワクチン接種後追跡調査が可能であったネコ31671頭中、肉腫が発生した症例は2頭であったとされています。ワクチン接種部位肉腫は極めて強い局所浸潤性をもつため、発生してしまった場合は、十分な外科マージンを含んだ手術様式で肉腫を摘出することが第一です。遠隔転移率は10~25%とその他の軟部組織肉腫とさほど変わりませんが、局所再発率が非常に高いため、外科手術後の放射線療法や化学療法などを駆使した集学的治療が必要となります。

1997年に発表された「ワクチンの接種方法に関するガイドライン」では、①不必要なワクチン接種は避けること ②肩甲骨間のワクチン摂取は避けること ③ワクチンの接種部位を標準化し、カルテにワクチン接種部位を記載すること ④一部位に接種するワクチンは一種類のワクチンに止めること(3種混合ワクチンは一種と見なす) ⑤ワクチンは皮下に注射すること とされています。発生率は低いため、過剰に心配する必要はありませんが、当院ではガイドラインに沿った対策をとっています。


フェレットの予防接種

フェレット

犬ジステンパーウイルスは、フェレットにも感染します。犬ジステンパーウイルスに感染すると暴露後12~16日でほぼ100%の個体が死亡します。そのため、フェレットでは犬ジステンパーウイルスのワクチン接種が推奨されます。
ただし、日本ではフェレット用に認可されたワクチンが存在しないため、個々の獣医師の裁量のもとインフォームド・コンセントを行い、犬用の混合ワクチンを使用しているのが現状です。

フェレットに使用するワクチンとしては、鶏由来細胞で継代された弱毒生ワクチンをもちいるべきであり、犬やフェレット由来細胞で継代されたワクチンを使用するとワクチン誘発性犬ジステンパーウイルス感染を引き起こす恐れがあります。当院では、フェレットには鶏腎細胞由来のワクチン株を使用したワクチンのみを使用しています。