予防について
避妊・去勢手術
避妊・去勢手術について
イヌ・ネコでは、繁殖する予定がない場合、避妊・去勢手術をおすすめします。手術は、小型犬および猫では概ね6ヶ月齢で行います。
犬
イヌでは初回の発情前に避妊手術を行うことにより、99.5%の確率で乳腺腫瘍が予防できるとの報告があります。 1回発情後では予防効果92%、2回発情後では予防効果74%、2.5歳を越えると予防効果は認められないと言われています。 乳腺腫瘍は雌犬の腫瘍で最も多く(腫瘍の約52%)、10万頭に198.8頭の確率で発生します。 悪性が50%、良性が50%との報告があります。
猫
ネコの乳腺腫瘍はリンパ腫、皮膚腫瘍に続き3番目に多い腫瘍で、その80%が悪性です。ネコでも早期に避妊手術を受けることにより、乳腺腫瘍の予防効果が認められています。避妊をしていないネコは、乳腺腫瘍発生リスクが避妊をしているネコの約7倍と言われています。また、避妊手術により子宮蓄膿症などの子宮・卵巣関連疾患がほぼ100%予防できます。
避妊・去勢手術のメリット
望まない繁殖が防げます。
乳腺腫瘍、子宮疾患などの疾病が予防できます。
発情に伴うストレスがなくなります。
避妊・去勢手術のデメリット
麻酔および手術のリスクがあります。
手術後太りやすくなります。
去勢手術を行うと、精巣腫瘍、前立腺肥大、会陰ヘルニアなどの予防効果があります。特に潜在精巣(精巣が腹腔内や皮下に留まってしまい陰嚢内に降りない状態)は、去勢手術をしないと将来的に精巣腫瘍の発生のリスクが正常犬と比較して9倍となります。
避妊・去勢手術は、基本的に健康な個体に行う手術ですので、安全性の高い手術です。手術の手技としても、去勢は易しく、避妊は中程度の難易度です。しかし、全身麻酔をかけての手術ですので、リスクは0ではありません。
当院では、手術の疼痛管理に麻薬性鎮痛剤を積極的に用いています。また、術後の疼痛管理のため、1泊2日の入院管理を行っています。
2008年の報告では、2002~2004年の間に188000頭の動物(病気の動物を含む)を麻酔した中で、死亡率はイヌ0.05%、ネコ0.11%、ウサギ0.73%であったとされています。当院では、適切な術前検査を行って個体の状態を把握し、麻酔前の全身評価をASA(アメリカ麻酔師学会)分類に基づいて5段階で評価しています。
ASA分類
分類 | 評価 |
---|---|
Class1(Excellent) | 器質的疾患や全身的障害がない、全く健康な動物 |
Class2(Good) | 軽度の全身性疾患のある動物、新生児、老齢動物(6歳以上)、単純骨折、代償されている心疾患、軽度から中等度の肥満 |
Class3(Fair) | 中等度の全身性疾患のある動物、発熱、中等度の脱水や貧血、慢性心疾患、慢性腎疾患、複雑骨折、軽度の肺炎 |
Class4(Poor) | 死に至る可能性のある重度な全身性疾患のある動物、尿毒症、重度の脱水や貧血、非代償性の腎疾患や心疾患、膀胱破裂、横隔膜ヘルニア、重度の気道障害 |
Class5(Critical) | 手術の有無にかかわらず24時間以内に死亡することが予想される動物、重度のショック状態、播種性血管内凝固(DIC)、激しい外傷 |